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思想を持つということ

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伊澤 優花

2017/01/12

コーヒーの3rd Waveってご存知でしょうか。


【第一の波】(ファーストウェーブ)インスタントコーヒーによってアメリカの一般家庭に広く普及した、薄くて安いアメリカンコーヒー大量生産・大量消費の時代。


【第二の波】(セカンドウェーブ)高品質な豆を使った、おしゃれで美味しい上質なコーヒーの流行。スターバックスに代表される大手コーヒーチェーンの台頭と、ラテの普及。アメリカ映画の出勤シーンと言ったら必ず片手にロゴ入り紙コップのコーヒーというほど「ライフスタイル」に浸透した。


【第三の波】(サードウェーブ)ブルーボトルコーヒーなどに代表される、豆の産地、トレーサビリティ、フェアドレードから淹れ方まで各工程にこだわり、一杯ずつハンドトリップで淹れる「こだわりの一杯」が脚光を浴びる。

インスタントコーヒーの普及によるファーストウェーブ。コーヒーは外で買って飲むようなものではなかったというそんな時代に、高価格(当時比)で「上質なコーヒー」を打ち出したスターバックスの成功は見ての通りです。ラテやエスプレッソなどの飲み方を広め、人々がコーヒーに関心を持ち、豆の産地やローストの方法などが一般的に知られるようになったのものこの時代だと言われています。


しかし、特別感が売りだったセカンドウェーブも次第にスーパーにも置かれ、店舗も増え、どこにでもあるコーヒーとして大衆化し、ファーストウェーブと似た路線を辿ります。(もちろん、大衆化とは多くの人ライフスタイルに根付いたという意味でもあります)そんな時、人々の心をつかんだのが、「こだわりの一杯」ことサードウェーブです。

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コーヒーのサードウェーブのこだわりは単純に味覚的に現れるものだけではありません。社会的・環境的に安定的な生産ができるよう、コーヒー生産者・産地へ配慮するサステナビリティ、フェアトレード、トレーサビリティ、デザイン。それらは決して味覚的に美味しさに貢献するものではありませんが、サードウェーブコーヒーが提案するのは味覚的快楽を超えた「体験」であって、目の前でハンドドリップで入れる視覚的・嗅覚的楽しさ、そしてこの一杯に込められたストーリー、コンセプト、想い、そういうものすべてを五感と、頭と心で感じ取って「美味しい」コーヒーです。


もちろん、サードウェーブコーヒーがもてはやされる一方で、変わらずたくさんの愛好者が居て、日常の一部として多くの人々の生活に溶け込んでいるスターバックスの偉大さは言うまでもありません。

日本酒に風潮においても、これと同様の構造が見える気がします。


ファーストウェーブが、輸出だけでなく海外に現地蔵を建てSAKEを世に周知させた、灘・伏見の大きなお蔵たちだとしたら、セカンドウェーブ、日本酒界のスターバックスは獺祭さんではないでしょうか?上質な純米大吟醸を引っ提げ海外の日本酒市場をブルトーザーの如く開拓していき日本酒の一つの時代を作りました。SAKE BOMBしか知らなかった人々にも日本酒の美味しさを知らしめ、SAKEに関心を持ってもらうきっかけを作りました。

獺祭がどこの日本食レストランにも置いているお酒となり、日本でも楽しまれている多く高品質なお酒たちが一般的に飲まれるようになった今、獺祭で日本酒に入門し、リテラシーの上がった人たち求めるものは、「こだわりの一杯」。


美味しいことが当たり前になった時代、人々が求めるのは味を超え、単純な原価計算では計れないストーリーや思想といった付加価値を持ったお酒ではないでしょうか。

味覚を楽しませてくれるものが溢れるこの飽食の時代、日本酒が提供できるものは、美味しさを超えた、こだわり、ストーリーや想いといった付加価値、心を豊かにしてくれる体験、嗜好品を超えた芸術・文化としての味わいではないでしょうか。


思想あってこその日本酒。そこに面白みを見出し、楽しんでみてはいかがでしょう。


思想といっても政治でも宗教でもありませんから、一方を貶したり、一つに忠誠を誓うこともありません。普段はスローフード推進派だけど、たまに友達とマック食べるくらいの気軽さがあってもいいのでは?